日本の「終身雇用制」は崩壊したと言われるようになって久しいものの、まだまだ転職に対しマイナスのイメージが根強い日本。一方アメリカでは転職がごくごく一般的。United States Department of Labor(アメリカ合衆国労働局)の調査によると18歳から48歳までの間に就く仕事の平均数は12という結果も。
転職社会を形作る背景は?またそのカルチャーの中で、どうしたら仕事探しを成功させられるのか?今回はアメリカの転職活動の基本を解説します。
まずは、アメリカがいかに転職社会かを顕著に表すデータをもう少し見てみましょう。先進国の従業員の平均勤続年数は以下の通り。
11.9年という日本の数値に対し、アメリカは4.2年。その他の国と比べても、アメリカは群を抜いて転職のスピードが速いことがわかります。
また求人情報専門の検索エンジンindeedによる以下のような調査も発表されています。
参照:indeed | What Matters to the Modern Candidate
日本的な感覚からすると、驚きの数字かもしれませんね。アメリカが「転職大国」と呼ばれる理由はここにあるのでしょう。
「終身雇用性」の労働感にも見られる通り、会社に忠誠を尽くす日本の働き方は、どちらかと言えば会社中心と言えるでしょう。「就職」の代わりに、「就社」という言葉が使用されたりしますね。
一方アメリカでは、会社・仕事は自身の人生を豊かにする手段のひとつ。我慢をして働くという考え方はあまりなく、自分の理想のワークスタイルや待遇を求め、転職をすることはごく普通の流れです。
採用者に仕事を割り当てる形をとる「メンバーシップ型雇用」の日本。ある特定の職務に対して即戦力となるスペシャリストを求める「ジョブ型雇用」のアメリカ。この2つを比較してみましょう。
日本 | メンバーシップ型 | アメリカ | ジョブ型 | |
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概要 | 人ありきで、職務が与えられる | 職ありきで、人が当て込まれる |
採用方法 | 特定期間に一括採用 | 欠員に応じた通念採用 |
特徴 | ・人材を大量に獲得し、社内研修で職務に必要な知識と経験を積ませる ・職務内容や条件に明確な規定がない為、会社は転勤や部署異動を命じることができる | ・ジョブディスクリプション(職務記述書)内で職務内容や条件を明確に定めた上で雇用契約を結ぶ ・転勤や部署異動など、ジョブディスクリプションに書かれていない命令に従う義務はない |
このように日米では雇用のスタイルが全く異なることが見てとれます。メンバーシップ型雇用は「終身雇用」「年功序列」を前提としていますが、ジョブ型雇用は給与や待遇が職務内容によって定められた「能力給制」。
これは裏を返せば、あるポジションで採用されている限り、昇格・昇給という概念は基本的にはないということ。
Forbesによる以下のような調査結果もあります。
一つの会社・ポジションで経験を積みキャリアアップの為に転職する、というスタイルが人材の流動性の根本にあると言えるでしょう。
先述の通りある、特定の職務に対して即戦力となるスペシャリストを求め人を採用する「ジョブ型雇用」のアメリカでは、採用後も常に結果が求められます。
日本では、長く働くほど評価される「年次評価制度」に加え、目的に到達するまでの過程を重要視する風潮もあると言われますが、アメリカでは「どれだけ会社に利益をもたらしたか」がキーポイント。パフォーマンスが伴わない場合、レイオフ(解雇)をし人を入れ替えることも一般的です。
上記の現状・背景を踏まえ、仕事探しを成功させるポイントとは?
このように流動性の強いアメリカの人材市場は、日々ファストペースで動いています。突発的な需要であり緊急の採用が必要、コンフィデンシャリティの高い非公開求人である、等の場合、公に出ることなく紹介経由で選考・採用が完結することもしばしば。
US Newsによる以下のような調査結果もあります。
アメリカには無数の人材会社が存在し、それぞれ強みが異なります。(例:日本語バイリンガルに特化、ITエリアを専門 etc)自身のニーズにあわせ、選択することをお勧めします。
人材会社に登録することに加え、ネットワーキングを通し直接リクルーターや企業のHR担当者と繋がることも有効的でしょう。
特にお勧めしたいのが、ビジネス特化型SNS LinkedInの利用。企業は有能な人材に能動的なアプローチができ、求職者は常にアンテナを張ることができます。
同社の調べによると、日本ではその他のSNSと比較しまだ馴染みが薄いようですが、アメリカをはじめ世界各国では普及率が高く、2018年時点でユーザー数は5億人を超えています。
先に言及した労働感から、企業側は「優秀な人材を州外や海外からでも採用したい、引越しに伴う費用は会社が負担する」というケース、求職者側も「よりよい機会を求め、引っ越しも厭わない」というケースも頻繁にあります。国土の広いアメリカですから、選考プロセスが全てオンラインで完結することも一般的です。
そこでWEB環境を整えておくことも、大切なポイントのひとつだと言えます。代表的なツール Skype、ZOOM、GoToMeeting などは事前にインストールをし、使用方法に慣れておくことも役に立つのではないでしょうか。